トランプ氏が「トレードシグナル」を販売?
トランプ氏の投稿をいち早く入手できる新サービスが、金融市場で取引上の優位性をもたらす可能性がある。
以前から、特にトレーダーの間では、ドナルド・トランプ氏の発言やSNSへの投稿が、株式市場や暗号資産市場の価格を大きく揺さぶると指摘されてきた。新たな関税措置の予告、特定の業界に対する方針転換、あるいは特定の資産に関するコメントだけでも、投資家による急激な買いや売りを引き起こすことがある。
また、トランプ氏やその側近が、市場を動かす可能性のある決定や発表を事前に把握していたのではないか、という疑惑も浮上してきた。批判する人々は、これをインサイダー取引、すなわち重要な未公開情報を利用して、ほかの投資家より先に取引を行う行為だと指摘することもあった。
ただし、疑惑や取引時期の一致、あるいは不自然なほど的中した取引だけでは、犯罪が行われた証拠にはならない点に注意が必要だ。
そして今、この状況はさらに大きな議論を呼ぶ可能性がある。SNSプラットフォーム「Truth Social」を運営するTrump Media & Technology Groupは、新サービス「Truth API」の提供を開始すると発表した。
このサービスは、銀行や投資ファンド、アルゴリズム取引を行う企業に対し、Truth Social上の影響力のあるアカウントが投稿した情報を極めて迅速に提供するものだ。その対象には、ドナルド・トランプ氏本人のアカウントも含まれる可能性がある。
もっとも、これは従来の意味での「トレードシグナル」ではない。「ビットコインを買え」「株を売れ」といった、具体的な売買指示が直接配信されるわけではないからだ。その代わり、契約企業は一般ユーザーよりも早く、生の情報を受け取れるようになる。
実際、このようなアクセス環境は、トレーダーに時間的な優位性をもたらす可能性がある。トランプ氏が関税や戦争、暗号資産規制、あるいは特定の産業について投稿した場合、Truth APIの利用者は、その内容をいち早く確認し、判断を下して取引を開始できる。
利用者に提供されるのは、完成された買いや売りのシグナルではない。あくまでも、公開された情報へのより迅速なアクセスだ。
Trump Mediaの公式発表によると、このサービスは2026年8月1日に開始される予定で、24時間体制のデータフィードに加え、2022年までさかのぼる投稿アーカイブも提供される。同社は、金融業界向けにデータを合法的かつライセンスに基づいて提供するサービスだと説明している。
議論の焦点となっているのは、トランプ氏が二つの立場を同時に持っていることだ。大統領として、世界経済に影響を与え得る情報を発信する一方で、トランプ氏の家族は、その情報への迅速なアクセスを販売しようとしている企業と、現在も経済的なつながりを持っている。
そこで、重要な疑問が浮かび上がる。Truth APIは単なる金融データ提供サービスなのか。それとも、国家の最高権力者という立場から生まれる情報面での優位性を収益化する仕組みなのだろうか。