フランス、耐量子コンピュータ暗号への移行を準備

フランスは2027年から、量子コンピュータに耐性のない暗号技術の段階的な廃止を開始する。

フランス、耐量子コンピュータ暗号への移行を準備

フランスは、従来型の暗号技術からの移行に向けて本格的に動き始めている。その背景には、量子コンピュータの急速な発展に対する懸念がある。将来的には、これらの技術が機密データの安全性だけでなく、ビットコインなどの暗号資産にも大きな影響を及ぼす可能性があるためだ。

フランスの国家情報システム安全保障庁(ANSSI)は、2027年以降、量子コンピュータによる攻撃に耐えられない暗号技術を採用したセキュリティ製品の認証を行わない方針を発表した。また企業に対しては、2030年までに新たな基準に準拠したソリューションのみを導入するよう推奨している。

ANSSIの認証は政府機関や重要インフラ事業者にとって必須であるため、この決定は実質的に旧来の暗号システムの段階的な廃止を意味する。

ANSSIの首席補佐官であるサミー・スイッシ氏は、「France Quantum」カンファレンスで、この課題は単なる技術的な問題ではないと強調した。同氏によれば、移行にはガバナンス、産業戦略、規制整備、さらには国家主権といった幅広い要素が関わっているという。

今回の方針転換は、「Q-Day」と呼ばれる事態への懸念とも深く関係している。これは、量子コンピュータが現在の暗号技術を解読できる能力を持つ時点を指す。専門家はまた、「今収集し、後で解読する(Harvest Now, Decrypt Later)」というシナリオについても警鐘を鳴らしている。これは、将来の解読を見越して、現時点で暗号化されたデータを収集しておく手法である。

現時点では、既存の暗号技術を破ることができる量子コンピュータはまだ存在していない。しかし、その実現時期は以前よりも近づいていると考えられている。Googleは今年3月、2029年までに耐量子暗号へ移行する計画を発表した。一方でProject Elevenは5月、十分に高度な量子コンピュータが2030年頃に登場する可能性があると予測しており、その場合、最大で700万BTCがリスクにさらされる可能性があると指摘している。

暗号資産業界も、この脅威への対応を進めている。Ethereum Foundationは、ポスト量子時代のセキュリティに特化した専門チームを設立した。Coinbaseはブロックチェーン開発者に対し、新しい暗号規格への移行を開始するとともに、移行されない資産の取り扱いについて議論を進めるよう呼びかけている。また、Stellar Development Foundationは、XLMネットワークを耐量子暗号へ移行するための3段階のロードマップを発表した。

一方で、すべての専門家が差し迫った危機を予想しているわけではない。BoundlessのCEOであるシブ・シャンカル氏は、リスクが高まっていることは事実だと認めつつも、その状況はこれまでの予測の範囲内だと述べている。同氏は、世界中の優秀な研究者や技術者がこの課題の解決に取り組んでいるため、過度に不安視する必要はないと強調した。

Share