欧州、次世代デジタルアイデンティティモデルの構築へ
HashgraphとTruesenseが、実世界での存在証明とデジタルIDを結び付ける新システムの特許を出願。
Hashgraph GroupとTruesenseは、特定の人物が実際に特定の場所・時間に存在していたことを証明しながらも、個人のプライバシー情報を開示しない新しいシステムについて、欧州で特許を出願しました。
このソリューションは Continuous Identity Trust Infrastructure(CITI) と名付けられており、欧州特許庁(EPO)に出願されています。対象範囲は44を超える欧州の法域に及び、米国でも同様の特許申請手続きが進められています。
この技術は、企業や公共機関がますます直面している課題の解決を目的としています。現在では、オンライン上でユーザーの身元を確認したり、建物への入退室を記録したりすることは可能です。しかし、それらの情報を安全に結び付け、「特定の人物が実際にその場所にいた」ことを証明するのは容易ではありません。
CITIは、UWB(Ultra-Wideband:超広帯域無線)測位技術、分散型デジタルアイデンティティ、そしてプライバシー保護技術を組み合わせています。これにより、詳細な個人情報や位置情報を公開することなく、信頼性の高いデジタル上の存在証明を生成することが可能になります。
今回の特許出願のタイミングも注目に値します。欧州連合(EU)は現在、eIDAS 2.0 規則のもとでデジタルアイデンティティ基盤の整備を進めています。加盟国は2026年末までに 欧州デジタルIDウォレット(European Digital Identity Wallet) を提供することが求められており、より安全で統一されたデジタル認証環境の実現が期待されています。
この技術は、スタジアム、病院、工場、金融機関など、さまざまな分野で活用される可能性があります。例えば、権限を持つ人物が実際にその場所へ訪れたことを確認しながら、同時に個人のプライバシーを保護することができます。
両社によると、この特許は人間だけでなく、デバイスや自律型システム向けのアイデンティティ管理技術に関する数年にわたる研究開発の成果です。将来的には、交通システム、医療分野、さらにはスマートシティのインフラにも応用される可能性があります。
現時点では、CITIが広く普及する標準技術になるかどうかは不透明です。しかし、この特許はデジタルアイデンティティの進化の方向性を示しています。今後は、オンライン上で「誰であるか」を証明するだけでなく、「どこにいたのか」を安全かつ信頼性をもって証明する仕組みが重要になるかもしれません。
一方で、このような技術に懸念を示す声もあります。デジタルアイデンティティシステムの批判者たちは以前から、特定の場所への存在を証明できる技術が、将来的に市民監視の強化につながる可能性があると警告しています。彼らは、誰がそのデータにアクセスできるのか、そして不正利用を防ぐためにどれほど厳格な保護措置が講じられるのかが重要な課題になると指摘しています。
これに対し、プロジェクトの支持者たちは、CITIに組み込まれたプライバシー保護メカニズムこそが、利用者を追跡するようなシステムの構築を防ぐためのものだと説明しています。最終的な評価は、この技術が実際にどのように導入・運用されるかによって決まるでしょう。